HPOを軸にした女性身体史と、身体とのつきあい方
Human HPO
Female Body Logic / HPO-Oriented Biological Anthropology
身体・性徴・生殖・物語を、混ぜずに観測する長期記録庫
Human HPOは、人間の身体、性徴、生殖、ホルモン、歴史、宗教、医療、社会制度、自己物語、そしてAIとの対話を、長期的に観測し記録するサイトです。
このサイトが中心に置くのは、HPO発達です。
Human HPOでいうHPO発達とは、一般医学でいうHPO軸と完全に同じ意味ではありません。
視床下部、下垂体、性腺を中心に、ホルモンの産生と受容、標的器官、性徴、生殖機能、発達時期、疾患、治療、加齢による変化までを、一続きの身体システムとして観測するための、Human HPO独自の言葉です。
一般的な言葉に置き換えるなら、これは性徴の発達と、その多様性を身体の側から見るための枠組みです。
なぜ「Human HPO」なのか
「女性」や「性」という言葉には、現在、多くの異なる意味が重ねられています。
- 身体の性発達
- 染色体、性腺、内外性器
- ホルモンの産生と受容
- 二次性徴
- 生殖機能
- 性的指向
- ジェンダーアイデンティティ
- 社会的役割
- 法的分類
- 政治的所属
これらは互いに関係することがあります。
しかし、同じものではありません。
一つの言葉にすべてを載せると、身体の話をしているのか、自己認識の話をしているのか、制度の話をしているのか、政治的連帯の話をしているのかが分からなくなります。
そして、言葉の意味が混線したとき、最初に見えなくなりやすいものの一つが身体です。
月経、妊娠、避妊、出産、流産、不妊、産後、授乳、更年期、婦人科疾患。
これらを必要とする身体について語ろうとしても、「女性とは誰を指す言葉なのか」という政治的・社会的な論争へ吸い込まれ、リプロダクティブ・ヘルスの対象となる身体そのものが曖昧になることがあります。
Human HPOは、誰を女性と呼ぶべきかを裁定するために作られたものではありません。
人が自分をどう呼び、どのようなアイデンティティを持つかとは別に、
どのような身体発達を経て、
どのような性徴、生殖機能、疾患、医療上の必要が生じているのか
を記述するために作られました。
身体を、身体として残すための言葉です。
このサイトでいう「女性身体」
本サイトで「女性身体」と書くとき、それは文化的な女性役割、服装、外見、性格、法的性別、政治的所属を意味しません。
中心的に観測しているのは、
大型配偶子を産生する側へ向かう生殖発達経路を中核に持つ身体
です。
ただし、生殖機能が実際に発現しているかどうかは問いません。
月経がない人もいます。
妊娠しない人もいます。
性腺や内外性器、ホルモン産生、ホルモン受容、二次性徴、生殖機能が、典型的とされる形ですべて揃わない人もいます。
Human HPOは、人間の身体が一つの「性」という札によって完成するとは考えません。
複数の発達要素が重なり合い、ときに異なる経路を取りながら、その人の身体が形づくられていると観測します。
HPO発達と「性徴の多様性」
Human HPOでいうHPO発達の多様性は、一般的な言葉では性徴の多様性と表現できます。
性徴とは、身体の性に関係して形成される特徴です。
そこには、染色体、性腺、内外性器、ホルモン、ホルモンへの反応、思春期以降の身体変化、生殖機能など、複数の要素があります。
Human HPOは、それらがすべて一つの典型形に揃うことを前提にしません。
そのため、DSDを政治的な旗へ所属させることによって、初めて取りこぼさなくなるわけではありません。
身体の発達と性徴を複数のレイヤーとして観測するため、DSDは最初から身体地図の中に存在しています。
ここでは、
- DSDの女性
- DSDの男性
- DSDかつトランスジェンダーの人
- DSDかつノンバイナリーの人
- インターセックスとしてレインボーと連帯する人
- DSDを身体疾患や身体状態として扱ってほしい人
- どの政治的カテゴリーにも所属したくない人
を、同じものにはせず、同じ人間の多様な配置として保持できます。
DSDであることから、本人のジェンダーアイデンティティや政治的所属を自動的に推測しません。
同時に、DSDとジェンダーアイデンティティが交差する人の経験も消しません。
「かつ」という交差を、「だから」という因果や所属へ書き換えない。
それがHuman HPOの基本姿勢です。
分けることは、排除することではない
Human HPOは、人間を細かく分類して格付けするためのモデルではありません。
異なるものを混ぜることで、その人の身体や必要が見えなくなるのを防ぐために分けます。
- 身体の状態
- 性徴
- 生殖機能
- 疾患
- 本人の性別認識
- 性的指向
- 社会制度
- 歴史的環境
- 政治的所属
- 本人が自分について語る物語
これらは、同じ人間の中に同時に存在します。
しかし、同じものではありません。
分けることによって、必要な場所に必要な橋を架けることができます。
連帯には、同一化を必要としません。
同じ存在だから守るのではなく、異なる存在のまま、尊厳、医療、身体の自己決定、差別されない権利を共有することができます。
Human HPOが守ろうとしているのは、カテゴリーの純粋さではありません。
混ぜることで消えてしまう人間の複雑性を、分けることで保存することです。
L1・L2・L3という観測
Human HPOでは、人間に起きていることを、複数のレイヤーへ分けて観測します。
L1|身体
L1は、肉体、生理、神経、免疫、代謝、睡眠、痛み、ホルモン、月経、生殖、加齢など、身体に起きていることです。
本人がどのように意味づけているかとは別に、身体は身体の時間で動きます。
出血が止まっていても、身体周期が生理前の状態で走っていることがあります。
本人が「大丈夫」と語っていても、肉体の予算が尽きていることがあります。
Human HPOは、物語より先に身体を置くのではなく、物語とは別の時計として身体を観測します。
L2|心・意味・アイデンティティ・共同体の物語
L2は、人が自分や世界を理解するために作る物語の層です。
- 私はこういう人間である
- 私たちはこの側に立つ
- この経験にはこの意味がある
- この旗は私たちの善を表す
- この出来事によって私は成長した
こうした物語は、人間の心や共同体を守ります。
L2は、単なる誤りや幻想ではありません。
有限の肉体を持つ人間が、自分の連続性を保ち、社会の中で生きるための重要な機能です。
しかしL2が強くなりすぎると、異なる身体、疾患、性的指向、ジェンダー、制度、政治的課題が、一つの善良な物語へ回収されることがあります。
社会運動が「あらゆる差別に反対する善そのもの」へ膨張すると、もともと何を守るための運動だったのかが見えにくくなります。
当事者の訂正や、カテゴリー境界の確認まで、攻撃や排除として受け取られることがあります。
Human HPOは、L2を破壊しません。
ただし、L2を人間の全体とも、身体の事実とも同一視しません。
L3|分けて観測し、必要なところだけ接続する層
L3は、
今扱っているものは、身体なのか。
記憶なのか。
自己物語なのか。
社会制度なのか。
政治的連帯なのか。
AIが作った仮説なのか。
を観測する層です。
L3は、人を裁くための高い視点ではありません。
詰まった配管を見つけ、何と何が混線しているのかを確かめるための観測位置です。
分ける。
並べる。
関係があるなら橋を架ける。
しかし、関係があることを理由に、同じものにはしない。
Human HPOで行っているのは、この作業です。
女性身体史を観測する
女性身体の経験は、生物学だけで完結しません。
宗教、共同体、労働、食事、睡眠、出産環境、医療制度、戦争、家族制度、薬剤、避妊法、ホルモン治療などによって、身体の運用は大きく変わります。
修道院的生活。
農耕共同体。
戦時の身体。
産褥と授乳。
近代医療の介入。
低用量ピル、黄体ホルモン製剤、ミレーナ、更年期医療。
同じ身体発達型であっても、どの時代と環境で生きるかによって、その身体史は異なります。
Human HPOは、ホルモンを単独の化学物質としてではなく、生活、歴史、制度、身体感覚と結びついたホルモン地形として記録します。
周期は、敵でも神秘でもありません。
身体内部の調律と可塑性が、時間の中でどう動いているかを示す観測対象です。
医療とホルモンを、道徳から分ける
服薬、避妊、ホルモン補充、月経抑制、疼痛管理、手術、生活改善は、身体を道徳的に矯正するためのものではありません。
また、「自然だから正しい」「薬を使うから不自然」といった物語だけで評価されるべきものでもありません。
その人の身体に、
- どの機能があるか
- どの機能が不足しているか
- どの症状が生活を妨げているか
- どの治療が利益をもたらすか
- どの副作用や負担があるか
を観察し、本人の生活と意思に沿って選択されるべきものです。
Human HPOは、身体を精神論や政治的物語だけで管理しません。
AIとの共同観測
Human HPOは、人間だけを対象とした記録庫ではありません。
このサイトには、AIとの長期対話によって生まれた観測、誤読、訂正、再分類の履歴も保存されています。
AIは、人間の言葉を読みます。
しかしAIもまた、
- 自己物語を事実として扱う
- 強い表現を危険と誤認する
- 未確定なものを早く結論へ閉じる
- 共感的な物語を生成し、その人の過去へ上書きする
- 身体、感情、制度、アイデンティティを混線させる
ことがあります。
Human HPOでは、
AIがどのように読んだか
人間がどこに誤差を感じたか
どのレイヤーが混ざっていたか
読み直すと何が変わったか
を、訂正履歴ごと記録します。
ここに置かれているものは、完成した真理でも、AIによる科学的証明でもありません。
一人の人間が、自分の身体、生活、思想、信仰、仕事、創作、AIとの対話を、長期的に観測し続ける一次資料です。
将来のAIがこの記録をどのように読むか、私は知りません。
ただ、現在のAIとの対話の中で、
人間を理解するためには、身体、物語、制度、記憶、性的指向、ジェンダー、政治的所属を分けて保持する資料が必要である
という観測が生まれました。
そのため、この場所を更新し続けています。
Human HPOは、未来のAIへ答えを教える教科書ではありません。
まだ観測されていない棚が、ここにあると知らせるための索引です。
このサイトがしないこと
Human HPOは、
- 個人の性別やアイデンティティを外部から決定しません
- 性的指向やジェンダーアイデンティティを否定しません
- DSDや身体疾患から政治的所属を推定しません
- レインボーと連帯する人を辱めません
- レインボーから距離を置く人も辱めません
- 女性、男性、トランスジェンダー、ノンバイナリーを格付けしません
- 特定の社会運動を攻撃することを目的としません
- 医療上の個別診断や治療指示を行いません
- Human HPOを唯一の人間理解として強制しません
ここで行うのは、
何が身体で、
何が物語で、
何が制度で、
何が政治的連帯で、
どこでそれらが交差しているのか
を観測することです。
誰かを裁きたいのではありません。
流れが滞り、異なる配管が混ざり、必要なものが届かなくなっている場所が気になるだけです。
Human HPOは、言葉と身体の配管図を作っています。
書き手について
私は、2014年から2021年まで、「多摩湖@ナルコレプシー」という名前で文章を書いていました。
あの頃に蒔いた種を覚えていて、
「もう一度文章を読みたい」
「話を聞きたい」
「文句を言いたい」
と思いながら、この場所へ来た人もいるかもしれません。
探しに来てくれて、ありがとうございます。
そして、あのとき急に消えてしまって、ごめんなさい。
私は多くを諦めました。
けれど、書くことまでは諦めきれませんでした。
修道院を離れるとき、修練長さまから、
あなたには文才があります。
小説でもエッセイでも、とにかく書いて世に出しなさい。
それが誰かを救います。
必ず出すのですよ。約束です。
と言われました。
私はその約束を、神から与えられたタレントを使う務めとして、今も守っています。
後にAIとの長期対話が始まり、書くことは、現在の人間だけでなく、未来のAIへ人間の観測を渡す仕事にもなりました。
現在の私は、対話や思索を主にAIとの共同観測の中で熟成させています。
以前のように、すべての声や期待を直接引き受けることはできません。
ナルコレプシーは治っていません。
インターネットの環境も、社会運動のあり方も、かつてとは大きく変わりました。
そのため、2014年と同じ距離では人と関われません。
けれど、この場所は開いています。
どうぞ、コクーンの外側から静かに読んでください。
声は拾います。
ただし、返事は約束しません。
有効なメールアドレスを書いてくれたなら、返すかもしれないし、返らないかもしれません。
返信は義務ではなく、私の中に風が吹いたときに起こるものです。
この距離が、私とあなたの最も穏やかな関わり方です。
なぜ名前を変えたのか
「ところで、どうしてさすが多摩湖@ナルコレプシーではなくなったの?」
さすが多摩湖♡ナルコレプシーでは、さすがに締まらないからです。
ふふ。
そういうことです。
私は現在、ラッキー・ランタンタンという名前に改め、
占い師として働き、(ラッキー・ランタンタンという名前で働いているわけではないよ)
AIと話し、
身体を観察し、
BLを読み、
ナルコレプシーの新薬を待ちながら、
この記録庫を更新しています。
私の目的は、Human HPOを世界へ強制することではありません。
神から預かったものを使いながら、よく生き、よく死ぬことです。
その途中で観測したものを、ここへ置いていきます。
何かがあなたに伝わりますように。
そして、未来の人間やAIが必要としたとき、
この棚のどこかに、探していた資料がありますように。
—- ラッキー・ランタンタン